謎制作者はどのように謎解きを作っているのか 事例1

2020-10-12公開

謎制作者はどのように謎解きを作っているのか

最近はweb謎にも制作後記として、謎の解説や何を考えて作ったかを記したものを公開する制作者の方も現れてきました。

文章に落とすという行為は非常に手間が掛かるものなので基本的には書かないのですが、今回は気が向いたのでtwitterで出題した謎について書いてみようと思います。

実際に出題した謎

実際に出題した謎はこちらです!

こちらは、ホロライブに所属しているvtuberのときのそらさんの誕生日にお祝いのために出題した謎です。

もしまだ解いていない人かいたら、記事の構成都合上、解説も行っているので、ぜひ謎を解いてから読み進めていただけるとありがたいです!(特にときのそらさんの知識がなくても解けるように作っています)

謎の解説

上記の謎の解説ですが、引用リツイートからセルフリプで解説して下さっている方がいらっしゃいましたので、その方のツイートを使用させていただきます。

こちらの方はネタバレに配慮して、敢えてラストアンサーを伏せてくださっていますが、実際にすべての星を通るように迷路を解きなおすと「これからもよろしくね」となります。

制作について

制作過程の全体的な流れ

制作日程の流れ

制作を開始したのが5日前の日曜日だったので、日曜日に大枠を作成してしまい、平日に小謎を詰めていくという感じで作成しています。

今回の謎は「小謎3問+ラスト1問」の構成ですが、筆者がこの構成の謎を制作するのに掛かる期間は2日~1ヶ月~半年くらいです(どこまで拘るかとか、締切までによってかなり変わります)。

でも基本的には1ヶ月前に作り始めれば良い方なので、1か月くらいでしょうか。

今回は5日で作成したので、かなり短期間で作成したことになります。

各謎について考えていたことやこだわりについては下の章でそれぞれ書いていきます。

出題形式・対象層設定

出題形式


まずは出題形式を決める必要があるのですが、過去に漫画家のあすわらさんが他のvtuberの方の同人謎を作成していた(この方がvtuberの同人謎制作では最初?)ので、この形式と基本デザインを模倣することにしました。

vtuberではないですが、自分の他にも過去に"推し謎"を投稿していた人が他にもいらっしゃるので、その人のものも参考にしようと思い、問い合わせをしたりTLを遡ったりも同時にしていました。[形式確認のため30分]

画像サイズは、「タップして解いてほしい」という考えと「横長の画像だとスマホで十分に拡大されない」という考えから、敢えて王道である縦横比16:9から外して1:1の正方形の画像にしました(この選択が正しいかは分かっていません)。


対象層


対象層としては、過去の出題した方の謎に対する反応を見る限り、自分の興味のない対象に向けられた推し謎は謎クラはほとんど反応しないことが分かっていたので(当然といえば当然ですね)、「謎解きを初めて知った人でも解ききれる謎」をコンセプトに作成することにしました。


設定・ラス謎

筆者は以下記事でも紹介している通り、基本的にラス謎から制作するスタイルです。

文化祭・学園祭での謎解きイベントの作り方

そのため、出題形式が決まったら、設定とラス謎を考えていきます。

今回題材にするときのそらさんにはえーちゃんという裏方兼友人の方がいらっしゃるので、えーちゃんからのお祝いメッセージをラストアンサーにすることにしました。[5秒]

二人の関係性や普段の言動から、えーちゃんが言いそうな台詞として「これからもよろしくね」がしっくりくるという結論になりました。[10分]

ラストアンサーが10文字なので直線的な文字拾いや解答欄再利用は難しいと考え、迷路の再利用をラストにすることに仮決定しました。(この瞬間に、小謎のうち1問(今回はB)が迷路になることが仮決定しました)[5秒]

仮決定とは?


何も案が無いと小謎の答えが決まらなかったり他の謎との被りを考慮できないので謎の制作が進まない状態に陥ってしまう。そのため、仮で答えや謎の種類を決めておくことで他の謎の制作ができる状態にしておくこと。

他の謎が決まった結果として仮決定が覆されることは良くあるため、筆者は汎用謎を案として答えが変更になった場合でも対応できるようにしておくが、そもそも謎自体が変更になることも良くある。

小謎 その1

小謎1

ときのそらさんのチャンネルには、(最近はあまり出てきませんが)トラッキングのテストのためか本人の横にクマのキャラクターがしばしば画面上に出てきており、このクマの名前が『あん肝』でした。

そのため、この『あんきも』というワードは小謎の1つとして使用しようと考えており[5秒]、「くま」というワードから変化して「あん肝」というワードを出すのが良いと考え、

  • 「くま」→「きも」に変化
  • 「きも」→「あんきも」に変化

の2段階で変化させる法則類推謎を使用することに決定しました。[10秒]


法則の変化まで決まっていればあとは作るだけの状態です。

1段階目の変化としては「2文字の単語の、1文字目を五十音順で1つ戻し、2文字目の文字を五十音順で4つ進める変化」となりますが、画像が正方形の都合上、変化1段階につき例示2つが限界であることを考慮し、より条件の厳しい「1文字目の母音をiからaに変化させ、2文字目の母音をiからoに変化させる変化に絞って単語を探しました。

また、今回はなるべくイラスト化できる単語のみを使うようにし、そのイラストも単語として容易に一意に定まるような単語をなるべく探すようにしました。

これは「イラストを利用した方が画像映えがしやすく、文字列と比べてスペースを取りにくい」ということと「今回の謎は変化の法則を推測する謎であり、イラストが表す単語を推測する部分がメインでない」ということがそれぞれ理由になります。

後者は謎の好みの部分もあります。

このような変化が成り立つような単語を探す機能はまだ謎解き単語検索betaには搭載されていないため、自力で探します。

結果として「うま→いも」と「ふた→ひと」が見つかりました。

このうち「うま→いも」は問題である「くま→きも」と2文字目が全く同じ変化をしており、筆者としてはあまり好かないのですが、これ以外に良い単語が見つからなかったため、妥協して使用することにしました。[40分]


2段階目の変化としては「単語の前に"あん"という文字列を付けると別の単語となる」という変化です。

こちらも1段階目と同様に、容易に一意に定まるイラスト化できる単語を選定しました。

こちらは謎解き単語検索betaで正規表現を使用し、「"あん"から始まる単語」を検索することで擬似的に探します。

が、想定していた以上にイラスト化しやすい単語が見つからず、

  • 例示に1文字→3文字の変化しかないため、元の文字列が1文字のときにのみ働く変化ではないことを否定できない

という点について妥協し、「あんき」・「ど」・「あんど」についてなるべく分かりやすいと思われるイラストを作成・採用することで対応しました。[1時間]

(「しん」→「あんしん」等の単語も存在したが、イラストが容易に一意に定まることを優先しました。)

画像制作[2時間]

ラス謎 指示

ラス謎指示と小謎の答えとの関係

さて、小謎の1つは初めから答えを決めていたのでそれ以外の小謎については答えとなる文字列が決まらないと謎を作れません。

そのため、ラストの指示文言を決定する必要があります。

迷路の解き直しとしては、再利用時の文字列が長いことから「1回目:〇〇をN個通る→再利用:〇〇を全部通る」とし、指示内容は「{色1}を{色2}にして{問題番号}を解きなおせ」としました。

小謎は全部で3問しかないので、できるだけ指示内容に「あんきも」が含まれるようにする必要があると思い、初めは「{色1}=あか {色2}=きいろ {問題番号}=くも」としました。

ここで{問題番号}をくも(雲)にしたのは、3つ程度が組になっている概念を探し、ときのそらさんの名前や配信開始時の挨拶から「空」をモチーフとしていることと、天気を表す「晴れ・曇り・雨」とすればちょうど「くも(=曇り)」の中に「も」が含まれていたためです。

その後、残りの文字が含まれる単語を考案している最中で、「かおもじ」を答えに採用すれば、「あか」の「か」をカバーしつつ、「おれんじ」の殆どの文字をカバーできることに気付いたため、2つめの答えを「かおもじ」にしました。(ときのそらさんがtwitter上で顔文字を多用していることをふと思い出しました)


ここまで決まると、あとは文字回収です。

残っている文字が「おれんじの『れ』」と「くもの『く』」なので、ラス謎で迷路の解き直しをすることを考慮して文字が被るように「れんらく」にしました。[1時間]

「くれよん」などの候補もありましたが、今回の迷路は基本的なルールなので変なルートは通れないため、なるべくラストワードの文字列がその順で入っているワードとして「れんらく」になりました。(下図参照)

単語の選定方法

イラスト依頼

ラス謎の形と小謎の単語まで決まりました。

あすわらさんのツイートを参考に、拡散のされやすさも考えてイラストを1枚は入れようと考えており、今回はえーちゃんが出題している体なので、えーちゃんのイラストをイラスト担当に依頼して1日目は終了です。(納期短くて本当にすみません。)

ただ、出題後に思ったのですが、祝われる本人のイラストが無いのは何か変な感じなので、こちらのバージョンのように出題されているようなイラストにすれば良かったかもなと思いました。(2回目以降の出題ではそのようになっています。)

小謎 その2

小謎2

さて、ここからは誕生日までスケジュール的に平日しかないので、ちゃきちゃき作っていくしかありません。

今回は画像生成コストを考慮して方眼タイプの迷路を選択しました。

以下の点に注意しつつ迷路を作っていきます。

  • 目視で解くのがしんどくない程度の難易度にする
  • 再利用時の答えが1回目のときに見えないようにする

まず、目視で解くのがしんどくない程度の難易度かつスマホからも十分に見えるサイズということで、今回は迷路サイズをスペースも考えて横8マス×縦6マスにしました。

個人的には8マス平方が認知負荷が高くない限界で、基本的には7マス平方くらいまでに抑えられると良いかなと思っています。

1回目に通る星の数はなるべく少なく、かつ2回目に唯一解になるように調整しました。

ここらへんは謎制作というよりもパズルの制作になってきます。[1時間]

ここは時間があればもう少し簡単に調整できたと思うのですが、再利用時の答えが1回目の時に見えないようにしようと思ってルートを長くしてしまい、結果として再利用時の難易度はかなり上がってしまいました。

公開前日のデバッグのときに別解が発見されて急いで修正していたとはいえ、ここは反省点です。

また、ラストと絡んだ問題ではあるのですが、この謎だけ他のものと比べるとときのそらさん要素が減ってしまっている感じが否めず、ここも少し反省点です。

今作るのであれば、彼女がプレイしているホラーゲームテイストにする(彼女がプレイしていた青鬼とか深夜廻的な)ような工夫ができたのかなと思います。

小謎 その3

小謎3

一番作るのに悩んでいたのが実はこれです。

課されていた条件としては以下であり、そんなに厳しくはないのですが、小謎その2でときのそらさん要素が少し薄めだと思っていたので、できるだけ要素を入れたいと思い、どのようにすれば入れれるかを悩んでいました。

  • 答えが「かおもじ」である
  • 指示文に「すべて」の文字列が入っている

小謎その2と並行しつつ、ときのそらさんの動画を漁りながら2日くらい考えていたのですが、あまりビビッと来るものが思いつきませんでした。

(ここが謎制作で一番ブレが大きいところです。24時間常に頭の片隅で謎のことを考えているフェイズで、納得いくものを思いつくか〆切が来るまでずっとこの期間が続きます。)

今回は〆切ギリギリまで粘った結果、「すべて」という文字列を最も違和感なく使用できるという理由でイラストしりとり結びにしました。[謎種類決定まで3日]

この形式であれば、問題番号の代わりに使用されている「タイヨウ」のイラストもしりとりに組み込む必要があるという理由づけのために「すべて」の文字列がオレンジ色になっていてもおかしくないですし、解き手としてもそのひっかけに気付きやすくなります。(この瞬間に、小謎1(法則類推謎)の問題番号が「雨(傘)」に決定しました。)

因みに、この「一見想定される枠よりも外にある箇所を参照する必要がある」というひっかけは比較的前からあり、気付きやすいものであれば謎検の練習問題として今回とほぼ同じものが出題されています。(ツイートを引用しようとしたらアカウントが凍結されていました。)

しりとりに使用するイラストは、引用リツイートした感想では「あとイラストが全部そらちゃんに関係ある。すごい」とありましたが、筆者としては「ザリガニ」と「ウサギ」をいれて作ろうくらいしか考えていませんでした。

全ての放送を追えている訳ではないので、多分筆者の知識不足です。

「ザリガニ」も「ウサギ」も結構しりとりで繋ぎにくい単語なので、相も変わらず謎解き単語検索betaで正規表現を用いて探しました。[単語決定まで1時間 画像制作30分]

画像制作と最終デバッグ

前日になりえーちゃんのイラストが届いたので、作ってあった画像と合わせます。

ついでにイラスト担当に最終デバッグを行ってもらいます。

時系列的にはここで雲の謎に別解が見つかったので、慌てて修正をしていました。[別解修正に30分 画像制作・出力に15分]

投稿

画像も出力が完了したら、当日0時に投稿するために公式のハッシュタグを確認したり文言を事前に打っておきます。

twitterのPCブラウザ版は、画像を普通に4枚添付しようとすると必ず画像の順序が変になるので手動で直す必要があります。

不安な人は、テスト投稿用のアカウントを作っておくのも良いかもしれません。

これで、投稿完了です![10分]

反応の分析

普段あまりtwitterで画像謎を投稿していないのであまり参考にならないかもしれませんが、この投稿に対する反応について書いていきます。

リツイートは引用RT合わせて66RTあり、大まかに分類すると、謎クラ:そらとも※1≒1:3 くらいでした。

自身のツイートの中でも2番目に多くリツイートされる結果となり、比率としても、当初予期していたよりも謎クラの方に反応していただけたかなという印象です。

因みに、この後大空スバルさん白上フブキさんの2作を発表していますが(記事執筆時)、その中でも圧倒的にこの作品が一番伸びており、単純にフォロワー数だけでなく、ファンの傾向も関係しているのではないかなと個人的には考えています。(謎の質とか内因的なの可能性ももちろん高いです。)

まとめ

  • 謎制作は〆切が先か納得が先かの勝負である
  • 意外と単語を探す時間や画像を作る時間が長い

今回、なるべく自分が謎を考えていることをなるべく詳細に書きましたがいかがだったでしょうか?

思っていた以上に長くなったので疲れました。この謎を作った期間よりも長い期間書いています。

謎制作で拘るポイントは人それぞれ違うと思いますが、商業でやっている方は、謎の種類の引き出しが多いところと、妥協する際にも適切な案をいち早く引っ張ってこれるところが優れているのだと思います。

推し事としての謎解き制作というのは中々謎解き寄りのタイムラインにいると見受けられないですが(MV謎とかは推し事として捉えられるかもしれません)、色んな推し方があるんだなぁくらいに思い、(ちゃんと知らなくても解けるように作っているので)気が向いたら解いていただけると嬉しいです。

脚注


※1:ときのそらさんのファンネームのこと。

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